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断る。桂はそう口にしようとしたかったが,伊藤がそんな事を言ったのが衝撃的ですぐに声に出せなかった。
「三津さんはここにおっても新選組に追われてろくに外も歩けん。
それなら長州で新しい暮らしをさせてやった方がえぇと思う。
奇兵隊の屯所か白石さんの家に置いたらいい。三津さんならすぐに馴染めるやろう。」
高杉の案がかなり具体的で現実味を帯びていて桂は何も言えなかった。
三津は女中の仕事にやり甲斐を感じている。そこにいれば寂しくもないだろうし,今回みたいに体調を崩してもすぐに気付いてもらえる。【生髮療程】激光生髮、生髮帽、生髮針有效治療脫髮? -
それに奇兵隊へ資金支援をしてくれてる白石家なら高杉の頼みとあれば三津一人の世話ぐらい請けてくれるだろう。
高杉は真剣に三津の先を考えている。
このままでは本当に引き離される。三津を連れて行かれる。今までにない焦燥感を味わった。
「……断る。」
「三津さんは武士の嫁には向いちょらん。つてで何処かいい嫁ぎ先も見つけちゃる。」
高杉は繋いだままの手を見つめながらその手に力を込めた。
桂もその繋がれた手に目を落とした。
触らないで欲しい。その手はこの私のモノだ。
「断る……。断るっ!断るっ!!誰であろうと私から三津を遠ざけるのは許さん!!」
声を荒げ拳を畳に打ち付けた。怒りで肩を震わせ鋭い眼光が高杉に向く。
「桂さん落ち着いてくれ。三津さんが起きてしまう。」
桂がこんなに激昂するとは思わず困惑しながら三津と桂の顔を交互に見た。
すると三津は小さな呻き声を上げながらゆっくり目を開けた。
「高杉さん……ずっと繋いどってくれたんですか?」
桂が帰って来てるなんて思いもしない三津には高杉しか見えてなかった。
「三津さん,さっき俊輔も言ったが俺らと長州行こ。向こうで暮らす方が存分に外に出られるし寂しい思いもせん。
桂さんとおるより幸せやと思う。」
桂は自分の存在を無にして三津の答えに神経を集中させた。
「高杉さん,私は小五郎さんの傍から離れませんよ。私は小五郎さんとおるのが幸せです。
そりゃ辛い事もあるけど,それは何処に行っても誰とおってもある事で乗り越えなアカンのですよ。
確かに……小五郎さんと乗り越えなアカン壁は何よりも高いと思います。
でも私逃げたりしませんから。」
だから行かないと微笑んだ。高杉はふぅと息をついて後頭部を乱雑に掻いた。
「席外す……。」
「え?」
ぱっと手を離して立ち上がって出て行く高杉を呆然と見届けるしか出来なかった。
「三津。」
頭上から降り注ぐ甘い声。視線を動かせば目が合った。驚きのあまり声が出なくて口をぱくぱく動かした。
「ただいま。一人にして悪かった。」
桂は瞳を潤ませ三津の顔を覗き込んだ。両手で頬を包み込んでしっかり向き合った。
この声と温もりがどれほどの安心感をくれるだろう。安堵から三津の表情が解れた。
「お帰りなさい。遅いやないですか。」
何て穏やかな顔なんだろう。いつもと違って見えるのは何故なんだろう。三津は右手を持ち上げてその頬に触れた。
「愛してる……。愛してる。愛してる。」
この胸に詰まった想いをどうすれば表せるのか。言葉でも態度でも表しきれない。
足りない。足りない。何もかも足りない。
桂は自分に触れてきた手を掴んで頬をすり寄せた。
『三津は何処へも行かないんだ。どこまでも私を一番に考えて想ってる。離れたりしないんだ。』
さっきの焦燥感が嘘のように消えた。その代わりに溢れ出したこの気持ちの処理の仕方が分からない。
愛してるばかりを繰り返していると三津ははにかんだ顔をした。
「はい,知ってます。」
もう充分伝わってると笑った。すると桂の顔が落ちてきた。三津は咄嗟に左手で桂の口元を押さてた。
「風邪がうつっちゃいます。」